意外と複雑な財産分与
財産分与は、基本的に「婚姻期間中に夫婦で築いた財産を2分の1ずつ分ける」ということになります。
こう聞くと、「離婚のときの財産を2分の1にすればいいのね。」と単純に思われるかもしれません。
しかし、これが結構複雑な問題を起こすことが多々あります。
以下、どのような問題が起こるか、いくつか例示をしたいと思います。
①基準時は別居時
財産分与を行う際の「夫婦で有していた財産」の基準時は、基本的に別居時になります。離婚時ではありません。
ですので、例えば、今年の1月1日に別居し、10月1日に離婚が成立した場合、基準となる財産は、1月1日時点で有していた財産です。
1/2~9/30までに増えたり減ったりしても、それは考慮の対象にはなりません。
②婚姻前に有していた財産
また、婚姻前から財産を持っていた場合、それは「特有財産」(夫婦の共有財産ではなく、一方の固有の財産)として扱われ、財産分与の対象外となります。
例えば、結婚時に100万円持っていて、別居時に300万円になっていたとしたら、夫婦の共有財産は、増加した200万円のみです。
ただし、婚姻期間が長期間にわたっている場合は、婚姻前に有していた財産は既に全て消費されたと考えられるため、婚姻前に有していた財産を考慮しないこともあります。
③親からもらったり相続した財産
親からもらった財産や、親が亡くなったことにより相続した財産は、一般的に特有財産として扱われ、財産分与の対象から除外されます。
もっとも、親から「夫婦の共同生活のために使って欲しい」と言われてもらったお金で家具などを購入したときは、夫婦の共有財産として扱われることもあります。
また、両方の親からお金をもらったが、例えば夫の両親から受け取ったお金は夫婦のために使って現在残っていない状況であるのに対し、妻の両親から受け取ったお金は妻名義の預金口座にまるまる残っている、というような場合に、どのような扱いをするかについては争いがあります。
④退職金
退職金について、財産分与の対象に含まれるか否かが争われることがあります。
退職金は、会社が倒産などした場合はもらえない可能性が高いですし、本人が懲戒免職などを受けることにより退職金が支給されなくなることもあるので、将来もらえるかどうかが不確定な要素を含んでいるからです。
まだ本人が若いうちは、退職金が考慮されないことありますが、一定の年齢又は勤続年数(40歳以上や勤続20年以上など)になると、考慮される場合が多くあります。
その際は、「別居時に自己都合退職した場合」の退職金額で算出することが多くあります。
なお、その場合でも、「入社してから結婚するまで」は、夫婦共有で築いた財産ではなく、一方が単独で築いた財産ですから、除外することもできます。
例えば、入社5年目で結婚した場合、入社1年目から4年目までで発生した退職金は差し引くなどです。
⑤法人の財産
離婚紛争の当事者が会社などの経営者だった場合に、その法人の財産はどうなるかについて争われることもあります。
基本的には、個人と法人は別人格ですので、法人が有している財産は財産分与の対象にはなりません。
しかし、個人と法人の財布があいまいで、個人のお金と同視できるくらい融通し合っていると、法人の財産が財産分与の対象となってしまうこともあります。
そのようなことにならないためにも、法人の財産の管理はきちんとしておいた方が無難です。
ここには書き切れないくらい、他にも様々な場面で争われることがあります。
「財産分与は2分の1だから簡単だ」などと思われずに、一度弁護士にご相談下さい。